意匠に関するよくある質問

意匠に関するよくある質問

 ここでは、意匠に関する知財戦略をFAQ形式で紹介しています。

意匠とは何か、意匠制度をどのように事業に活用してゆくべきか等をできる限りわかり易く実務的な観点からご説明しています。

「意匠」とは何ですか?
「意匠」(Design)とは、大量生産が可能な工業製品(物品)のデザインです。例えば、掃除機、洗濯機などの電化製品、洋服や靴なのどのアパレル製品、さらにはお菓子などの食品のデザインなども該当します。また、物品全体だけでなく、物品の一部分のデザイン(例:マグカップの取手部分)も意匠法上の意匠に該当します。 意匠のうち、特許庁における正式な手続を経て登録されたものを「登録意匠」といいます。意匠を登録すると「意匠権」という権利が発生します。この権利は、登録された意匠を登録された物品について日本全国で独占排他的に使用できる権利です。「独占権」ですから、同一の内容の意匠権は原則として日本国内において一つしか存在しません。したがって、他人の登録意匠等と抵触する意匠は登録が認められません。また、意匠権は、価値ある意匠の創作に対する「ご褒美」として付与されるものですから、既に世の中に存在するデザインと同一又は類似の意匠や、既存のデザインをベースにして容易に創作できる程度の意匠については登録が認められません。
新しい製品を販売したところ、デザインが好評で売れ行きが伸びています。そこで、今から意匠登録をして、他社の模倣を阻止したいのですが可能でしょうか?
意匠権は価値ある意匠の創作した者に与えられる独占権ですから、既に世の中に存在するデザイン(=公知のデザイン)と同一又は類似の意匠に対しては与えられません。これは、自ら公知とした場合も同様です。したがって、原則として、一旦公にした意匠に対して意匠登録は認められません。 しかし、これには例外があります。自らの行為(例:製品の販売)により公知となった意匠については、その公知となった日から6ヶ月以内に一定の手続を経て意匠登録出願した場合に限り、当該公知の行為がなかったものとして登録要件の判断がなされます。これを「新規性喪失の例外規定」といいます。本件の場合、この規定の適用を受けることができれば、今から意匠登録をすることが可能です。 なお、新規性喪失の例外規定は、出願日を遡らせるものではありませんので、出願日前に第三者が独自に類似の意匠を公知にしているような場合には、そのことを理由に登録が認められませんので、「公知から6ヶ月以内であれば必ず大丈夫」というものではありません。
当社新製品のデザインを外部の業者に依頼しました。この製品の意匠登録をする上で注意すべきことはありますか?
意匠登録を受ける権利を有するのは創作者(デザイナー)です。したがって、本件の場合、意匠登録を受ける権利を外部業者から貴社が譲り受ける必要があります。デザインの外部委託をする場合は、意匠登録を受ける権利の譲渡等についても明確にしておくことが重要です。 また、願書には創作者を記載する欄がありますので、ここにデザイナーの氏名を記載することとなります。これは、いわば創作者の名誉を讃える意味の記載であり、意匠権者となるのはあくまで出願人(=創作者から意匠登録を受ける権利を譲り受けた者)です。
登録が認められない意匠について、もう少し具体的に教えて下さい。
以下のような意匠は登録が認められません。

・すでに世界のどこかで公開されている意匠(=新規性のない意匠)
・公知の意匠から容易に創作できる意匠(例:スカイツリーを模したチョコレート)
・物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠(例:衛星放送用アンテナ)
・工業上利用することができない意匠(例:一品製作品の意匠)

その他にも、意匠登録が認められない意匠が意匠法上規定されています。
意匠登録が認められなかった場合、製品として販売することはできないのでしょうか?
意匠登録が認められなかった理由によって、販売可能か否かが決まります。すなわち、第三者の登録意匠(現存しているもの)の存在を理由に拒絶された場合、出願した意匠を実施すると当該第三者の意匠権を侵害することになりますので、製品として販売することはできません。一方、その他の理由で拒絶された場合には、原則として販売(意匠の実施)は可能です。
部分意匠制度とはどのような制度ですか?
部分意匠制度とは、物品の部分(例えばマグカップの取手やシャツの胸ポケット等)に特徴がある意匠の場合に、当該部分のみを意匠登録することができる制度です。以前は、物品の全体又は部品(独立取引が可能なもの)についての意匠登録しか認められていませんでした。そのため、物品の一部について特徴がある意匠の場合でも、物品全体として意匠登録するしかなく、当該特徴を真似しながら他の部分に変更を加える「巧妙な模倣」に対して権利行使が認められない事態が生じていました。そこで、特徴ある物品の部分を効率的に保護すべく、部分意匠制度が導入されました。部分意匠として登録した場合、当該部分以外の形状等に関わらず、当該部分と同一・類似の部分を備えていれば、原則として同一・類似の意匠と判断されて、意匠権の行使が認められます。
関連意匠制度とはどのような制度ですか?
関連意匠制度とは、互いに類似する一連の意匠(バリエーション)の意匠を効率よく保護するための制度です。本来、ある意匠に類似する意匠の登録は、たとえ同一人が出願した場合でも認められません。これは、次々に類似する意匠を登録して、意匠権の存続期間の実質的延長を図ることを防止するためです。しかし、一連の意匠を互いに関連づけ、存続期間を統一する等の措置を講ずることにより、上述のような弊害を生ずることなく、バリエーションの意匠の効果的保護を図ることができます。そこで、一定の要件のもとで、バリエーションの意匠の登録を認めることとしました。
意匠の出願は比較的簡単な手続なので自分でも出来ると聞きましたが、ほんとうでしょうか?
意匠登録出願は、所定の事項(出願人、物品名、意匠の説明等)を記載した「願書」及び図面等を特許庁に提出する手続です。「提出」といっても、現在では専用回線やインターネット回線を利用した電子出願が主流となっています。したがって、紙書類で提出する場合には、別途「電子化手数料」が必要になります。なお、ご自身でインターネット回線を利用して出願する場合には、「電子証明書」を事前に取得しておく必要がありますのでご注意下さい。 意匠登録出願の願書自体は1~2ページ程度の書類ですので、書類の作成自体は決して複雑な手続ではありません。難しいのは、出願内容(意匠の特定等)の検討です。例えば、「全体意匠で出願すべきか、または部分意匠として出願すべきか」「いくつかのバリエーションからなる意匠を効率よく保護するにはどうすればいいか」「物品名の記載や物品の説明はどうすればいいか」等は、十分な法律知識や経験がないと正しい答えを導き出すことは困難です。これらを誤ると、「本来であればひとつの意匠を登録すれば十分な保護が得られたにもかかわらず、不必要な意匠まで出願してしまい何倍もの費用がかかってしまった」「部分意匠で保護すべきところ、全体意匠で登録してしまった為、十分な保護が得られなかった」といった事態にもなりかねません。なお、出願後に意匠を変更したり、物品を変更することはできませんので、もしも誤った内容で出願した場合には、出願そのものが無駄になってしまいます。 知的財産部を配する大企業であれば、自社で手続をおこなうケースも少なくありませんが、それほど多くの出願件数がない一般の企業では、専門家である弁理士に依頼したほうが結果的に時間と費用の節約となるでしょう。
意匠登録の費用を教えて下さい。
意匠登録の費用は、意匠や物品の説明の有無、新規性喪失の例外規定の適用の有無等によって変動します。通常の意匠登録出願の場合、出願から登録までの費用は合計で「121,700円(税込)」です(図面を当所で作成する場合には別途図面代)。これには、出願印紙代(16,000円)及び1年分の登録料(8,500円)が含まれます。なお、出願の過程において意見書等を提出する場合には、別途費用が発生致します。
意匠登録出願をおこなったところ、特許庁から「拒絶理由通知書」という書類が届きました。意匠の登録は諦めざるを得ないのでしょうか?
「拒絶理由通知書」とは、特許庁の審査官が審査をおこなった結果、ある理由により意匠の登録を認めるべきではないと判断した場合に発せられる通知書です。これに対して何も応答しない場合や、応答はしたものの依然として拒絶の理由が解消しない場合には、「拒絶査定」という処分がなされ、原則として意匠登録出願は消滅します。「拒絶理由通知」は「拒絶査定」に先立ってなされる言わば予告通知であり、同時に、出願人による反論の機会を提供するものでもあるのです。ですから、当該通知書が届いたというだけで意匠登録を諦める必要はありません。 拒絶の理由には多種多様なものがありますが、すべて意匠法上に規定されています。例えば、「公知の意匠に類似する」「公知の意匠から容易に創作できる」「意匠の内容が不明確である」等があります。出願人としては、各々の拒絶理由に対して適切な対応を取る必要があります。例えば、審査官の判断が妥当性を欠く場合にはその旨を主張した「意見書」を提出します。また、一部の図面が他の図面と整合しない等の場合には、要旨を変更しない範囲で図面の補正をおこなうことにより、拒絶理由を解消することが可能です。その他にも様々な対応策があり(いくつかの対応策を複合的に講ずる必要がある場合もあります)、その対応如何によって意匠登録が認められたり拒絶されたりするケースも少なくありません。 拒絶理由通知への対応については、当然のことながら意匠法や審査基準等についての十分な知識が必要となります。しかし、単なる知識だけでは適切な対応をとることは困難です。拒絶理由通知への対応策は通常ひとつではありません。また、それらを複合的に講ずるとした場合には、様々な選択肢が存在することになります。それらを比較検討して最良の方法を導き出していくためには、現実に数多くの案件に接してきた「経験」が不可欠です。机上の論理では、現実の問題は解決しません。その意味でも、とりわけ拒絶理由通知への対応については、実務経験が豊富な弁理士に依頼することが大切です。
出願内容や拒絶理由通知への対応などは、すべて弁理士任せにしたほうが良いのでしょうか?
意匠に関する手続は、十分な法律的知識と豊富な実務経験が要求される場合が多いことは既にお話しました。そこで、専門家である弁理士に手続の代理を依頼することになるわけですが、すべてを任せきりにするのは好ましくありません。最終的に権利者となるのは依頼者ご自身であるわけですから、どのような手続を取り、どのような権利内容とすべきか等の最終的なご判断は依頼者ご本人にしかできません。 これは、医師と患者さんの関係に似ています。最近では「インフォームド・コンセント」という言葉が一般的になりつつあります。医師には患者さんの病状や取り得る治療方法を患者さん自身がきちんと理解できるように説明する義務があり、患者さんもそれらを理解した上で、医師と患者さんとが一丸となって治療に取り組むという考え方です。弁理士の場合も同様であると考えます。例えば、拒絶理由通知が発せられた場合には、弁理士はその内容及び取り得る手段を平易な言葉できちんと依頼者の方に説明をする義務があります。一方、依頼者の方も、その内容を理解して頂く必要があります。そうすることにより、両者の信頼関係が深まり、より質の高い手続が可能となるのです。
無事に意匠権が取得できました。権利を存続させる上で、どのような点に気をつければよいですか?
意匠権を維持するためには、各年分の登録料(年金)を特許庁に納付する必要があります。年金は数年分をまとめて納付することも可能です。年金納付がなされなかった場合、原則として納付された最後の期間をもって意匠権が消滅します。 また、意匠権者の名称や住所に変更があった場合には、その変更を特許庁に登録する必要があります。住所等が変更されたにもかかわらず放置すると、重要な連絡が特許庁から届かずに、最悪の場合には意匠権が消滅する場合がありますので注意が必要です。
日本で商標登録をしておけば、海外においても意匠を実施できますか?
意匠権は国毎に権利が独立しています。したがって、日本の意匠権の効力は日本国内にしか及びません。海外で商標を使用する場合には、原則として各国において意匠登録をおこなう必要があります。この場合、日本に出願をしてから6ヶ月以内であれば、パリ条約という条約に基づく優先権を主張して外国(パリ条約加盟国)に出願することにより、日本における出願日に出願していたのと同様の扱いを受けることができます。なお、国によっては「意匠制度」ではなく「特許制度」の中で意匠の保護を図っているところがあります。
 

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